自己愛性人格障害(154) 胸の傷 その2

元プロ野球選手で張本勲という人がいる。日本プロ野球史上初にして唯一の3000本安打を放つのみならず、本塁打も500本以上打っている名選手である。張本勲は、不注意から幼少の頃に右手に大やけどを負い、親指と人差し指が完全に伸びず、薬指と小指が癒着したままという後遺症が残った。

プロ野球選手になったばかりの頃、ふと自分の右手を眺め「この指がまともだったら、もっと良い成績が残せるのになあ」こうつぶやいたところ、母親が号泣したという。右手のやけどや後遺症は、母親の責任ではない。前回書いたワシの胸の傷も母親の責任ではない。それでも、親としては、子供の身体に瑕疵があると、それを自らの責任のように感じるのであろう。張本の母は号泣し、ワシの母親は「済まなかったね」と謝った。

ワシと張本が違うのは、張本はプロ野球選手としてハンデとなったかもしれないが、ワシは自分の人生において全くハンデにならなかったということ。張本は母の涙を見て以後、右手を誰にも一切見せないことにしているそうだ。過去唯一、川上哲治に見せたところ「よくこんな手で・・・」と絶句したという。

ワシは全く気にすることなく、海でもプールでも平気で裸になっていた。特に見せるわけでもないが、特に隠しているわけでもない。むしろ傷があることを意識することの方が少ない。ワシの身体には、生後すぐに行なった、大きくグロテスクな手術痕がある。母は自分の責任ではないのに、済まないと謝った。父は乳児のワシへ移植するため、皮膚の提供を申し出た。

ワシは両親に感謝している。特にコンプレックスを抱くことなく大学まで行かせてもらって、愛情を多大に受けて育てられた。だからこそ、人格障害者さえいなければ、ワシは本当に心から幸福だと言えるのだが。そして、こんな両親を絡めた人格障害者だからこそ、ワシは40歳を超えた今でも苦悩している。

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