自己愛性人格障害(142) いずれにせよ不幸であるべき その2

もう一つ、印象深い事件を挙げたい。それは竹下登についてである。竹下登は、自民党最大派閥の田中派に所属していた。当時の田中角栄は後継首相指名に絶大なる影響力を持ち、その見返りとして自らの派閥から大臣を排出していた。しかし、田中角栄は自分の影響力が落ちるのを恐れてか、大臣は出すものの、ずっと自分の派閥から首相を出さなかった。一方、竹下登は野心あふるる政治家で、いずれ首相になることを目標に田中派で力をつけていった。

ある時、竹下登は自分のボス田中角栄に了承を得ず、直接、時の首相にアピールして大臣の椅子に座る。この抜け駆けを知った田中角栄は「竹下はまだ雑巾掛けが足らん」と激怒する。この一件で、竹下登は一生首相にはなれないと思ったことだろう。そこで竹下は「勉強会を作る」と田中にウソをつき、創世会という、事実上の自分の派閥を旗揚げする。メンバーは田中派からの引き抜きである。田中は、子飼いの竹下の裏切りに激怒したものの、直後に脳梗塞で倒れ、影響力の低下と共に二度と政治に復帰することはなかった。これも竹下登にとっては僥倖であった。

話を簡潔にまとめよう。田中角栄は竹下登を首相にする気がなかった。どうしても首相になりたい竹下登は、 田中派をのっとり、自分を担ぐ派閥を作る。直後、田中は脳梗塞で倒れ、なす術もなくなってしまった。竹下にとっては、派閥を作った後に、タイミング良く田中が倒れてくれてシメシメである。これで自分が首相になるための障害がなくなった。

1987年、中曽根康弘が、自分の後継となる首相を指名することになった。候補は3人。安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一、いわゆる安竹宮である。熾烈な後継者争いのさなか、 突如、皇民党と名乗る右翼団体が、国会議事堂のまわりで街宣活動を始めた。これが有名な「皇民党事件」である。「竹下さんは立派な政治家です~」「日本一お金儲けの上手い竹下さんを総理大臣にしよ~う」。いわゆる「褒め殺し」を連呼する街宣車が国会のまわりを練り歩くのである。竹下登は、ほとほと参ってしまう。使いをやらせて億単位のカネを提示しても皇民党は受け取らないという。中曽根康弘には「右翼も止められないようでは首相に指名できんぞ」と叱咤される。困り果てた竹下登は、ヤクザに仲介を依頼し、褒め殺しを止める条件を提示される。その条件を満たす事により、この褒め殺しはピタリとやむのである。竹下登がヤクザまで使って首相になったというのは、このことを指す。

さて、億単位のカネすら断った皇民党が、竹下に提示した褒め殺しを止める条件とは何か? それは「田中角栄邸に赴き、謝罪せよ」であった。首相に向かって突き進んでいた竹下登が、まさにその絶頂に到達しようかという時に、かつて自分が裏切った田中角栄の亡霊が、突如として登場したのである。

田中角栄は毀誉褒貶あろうが、新潟では絶大な人気を誇り、日本の発展に寄与したことには間違いない。その田中角栄が、ことのほか可愛がったのが、同じ新潟から学歴もなく裸一貫で上京した佐川急便の会長であった。運送業は認可から規制から、政治家への陳情が欠かせない。田中角栄は、そんな佐川急便に多大な便宜を図っていたのである。佐川急便の発展は田中角栄の存在を抜きには語れない。田中角栄は恩人と言ってもいい。その恩人を裏切った竹下が、今まさに首相にならんとしている。皇民党が億単位のカネを蹴ってまで凱旋活動が出来たのは、佐川急便から資金が出ていたからに他ならない。皇民党事件は、佐川急便が田中の仇討のために画策したものだった。もっとも、単なる浪花節で巨額のカネが動くはずはないが、とりあえず表向きはこのような事件とされている。

この事件からワシたちは二つの教訓を学ばねばならない。まず竹下が田中を裏切って、一瞬でも順調に物事を運ぶことが出来たこと。しかし、シメシメと思っていた竹下に、 時を経て、自分が裏切った田中の手のものが、結局は復讐に現れたということ。筋を通さなかった報いが、時空を超えて竹下に襲い掛かったのである。

そして田中角栄である。目をかけた佐川急便が、 動けない自分に代わって、竹下に仇討をしてくれた。自分が指示したわけではないだろうが、親分を裏切った竹下は許せねえと思うほど、田中を慕っていた人がいた。それほど、田中に恩義を感じていた人がいたということだ。

方や裏切った人物。方や恩義を与えていた人物。ワシには、竹下登が、自己愛性人格障害者たちと被る。いずれ、自己愛性人格障害者たちにも、佐川急便みたいな人たちが現れるのではないかと。その日まで束の間の休息をしていればよい。そして田中角栄のように他人のために汗をかいた人は、いざという時に、力になってもらえるだろう。

結局、竹下は首相にはなったものの、リクルート事件を受け、短命に終わってしまう。

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7 thoughts on “自己愛性人格障害(142) いずれにせよ不幸であるべき その2

  1. ナナサン より:

    はじめまして。
    息子が10歳になるのを待ち続け、ついにこの4月、12年連れ添われた自己愛妻に離婚を宣告しました。典型的な自己愛で支離滅裂です。協議離婚、調停離婚はありえないでしょう。幸い息子は私についています、ので先手を打って『監護者指定』の審判を申し立て現在戦闘中です。
    とりあえず今日は挨拶に伺いました。
    今後しばらくのあいだ宜しくお願いします。

  2. 自己愛夫 より:

    ナナサン
    自己愛の夫には、大変な思いをさせられてばかりで、離婚の話をしても無視されるだけで、協議離婚は無理そう。
    調停離婚でもって思っていたけど、やはり無理でしょうか?
    彼女でも出来て、向こうから離婚を言ってくれれば嬉しいですが、相手が自己愛だと本当に厄介で、結婚したことを後悔します。
    結婚して得た物は、子供たちだけ。失った物は、健康(心身とも)
    父。ケチられてばかりで、いい思いをしてないから、マイナス面の方が多いが、先日夫から「お前と結婚してからマイナスになった」
    と豪語。   普通の人間なら、父を死に追いやったら懺悔や後悔や反省の気持ちになるのに・・・というか、普通の人なら、父を死に追いやることはしない!!!
    こんな自己愛を許そうとよくもまあムダな努力をしてきたものだ。
    自己愛には極力何もしないが、はじめからしなければよかった。
    自己愛には、心なんか通用しない。損してきたなあ。
    すみません。愚痴でした。

  3. とーます より:

    ナナサン
    できるだけコンパクトに決着つくといいですね。
    そのうち、外堀を埋めにかかるかもしれません。
    わたしも離婚宣言したときに
    わたしの知らないとこで、実父に
    「○○(私)はノイローゼだから」と
    自分には否が無いように仕向けていました。
    これに負けないように、どうか、頑張ってください。

  4. せんち より:

    *** ナナサン
    支離滅裂・・・相対する弁護士さんも困るのでは。
    相手も弁護士をたてれば、そこは弁護士同士の話合いなので、
    話にならないという事にはならないと思うのですが。。。
    また進展具合を教えてください。
    *** 自己愛夫さん
    得たものは子供、と言えるのが素晴らしいです。
    やはり母親は子供のためなら何でも出来るんですね。
    ボクも、子供はこれからですが、楽しみです。
    *** とーますさん
    外堀を埋めにかかるでしょう。間違いなく。
    共通の知り合いの間で、身に覚えのない噂が流布するでしょう。
    これも間違いなく。
    さて、どうしたものでしょうか。

  5. 元スネ夫 より:

    自己愛夫さんへ
    最近、履歴は消していますか?
    面倒くさくてもそこだけは絶対に用心してほしいところです。
    自己愛を切ることはものすごく大変ですが、それだけ人間として成長して、自分自身を大切にできるようになると私は思います。
    そういうことが幸せに直結することだと思います。

  6. ナナサン より:

    皆さん有難うございます。
    私の前では支離滅裂ですが、弁護士や第三者の前では、ちゃんとしたフリします、それが自己愛w。
    ただ嫁側の弁護士は結婚3年目の別居騒ぎ以来(現在12年目)
    の再登板で自己愛かはともかく、嫁が普通で無い事ぐらいの認識はあるはず。しかし依頼人の弁護という職務に忠実たらんと心がけているのか、提出される文書の内容は、「あること1割」に対し「ないこと9割」。バレバレの嘘や造り噺。調べれば、聞けば明らかになる事でも違う話に作り上げてくる。これが特徴の1つ“思い込み”ですね。幸い?警察沙汰や、第三者の関与、一部録画や生録など揺るがない証拠が有りますのであわてません。が、しかし「負ける要因は無い」と思いながらも何をしでかすか判らない怖さも感じてます。

  7. ナナサン より:

    自己愛夫さん
    言葉や気持ちが通じない自己愛相手に調停は成り立たないと思います。お互い頑張りましょう!
    とーますサン
    結婚してすぐの頃。
    とうぜん知り合いや友人に紹介しますよね。
    旦那の友人は私の友人・・・たった1~2回しか会わせてなくても。
    たしかに或る意味間違いではありません。
    さらに同席した友人の奥さんなんかイキなり親友!?
    そして1年も経つ頃、その複数の友人達から「実はお前んちの嫁さんから家の嫁にメールが来てさぁ。」と。
    嫁の私に対する愚痴?返事のしようもないメールが送られていたそうです。
    それから10年近く凌いで来ました。子供にも助けを求められています。
    父として『負けられない闘いが、今ここにある!!』。
    せんちさん
    相手方は、「お互い離婚に異存は無い。だから(監護者指定の)審判は打ち切りにして調停に場を移しましょう。」と提案してきた。
    家裁の担当官も私の弁護士も、そのほうが合理的と納得しかける。
    しかし私は妻側の文書に『近々離婚調停を立てるつもり、親権についても“そちらで”争う。』とあるのを見逃しませんでした。
    ウッキー相手に調停なんて時間の無駄でしかない。
    そもそも離婚に異存が無いのであれば調停する必要も無い。
    審判打ち切りの狙いは監護者(親権)決定の先延ばしを謀るものである。
    私は審判の続行を強く求め認められました。
    ウッキーの妄言を絶つには息子、私、嫁、環境などを家裁に直接調査してもらうしかないと考えました。

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