自己愛性人格障害(128) ブラック企業 その2

前回の続き。

この会社がブラック企業だということは、最初から職場の雰囲気で容易に察することができた。おそらく今思えば、 ワシの部署の部長が人格障害者だったのだろう。当時はもちろん人格障害などという言葉も知らず、ただ目がイッちゃってるなと思っていた。何というか、目が魚のように濁っているのである。それがワシの第一印象であった。その部長が、部下に対しイジメ、嫌がらせをしていたのである。ターゲットとなっていたのは、ワシより少し前に入社した60代のおじさん。ここでは鈴木さんとしよう。

鈴木さんは、かつて勤めていた会社の一部上場に尽力したということで、その手腕を買われ、定年後にヘッドハンティングされて入社した。ところが、この会社では、鈴木さんの手腕を発揮する場面はない。部長は、その鈴木さんをバカにし、 理不尽な嫌がらせをしていたのである。ワシはまだ20代と若かったため、大人の世界でもこのようなイジメがあることに、かなり衝撃を受けた。ワシの父親と変わらない年齢の人たちが、まるで中学生のような子供っぽいイジメや嫌がらせをしているのである。非常にショックだった。

そんな鈴木さんが、ある時、お昼休みにワシを食事に誘ってくれた。ボクはいい機会だと思い、食事をしながら鈴木さんに対峙した。「鈴木さん、あんな理不尽なことされて、なんで黙ってるんですか!」。憤慨しているワシに対し、 鈴木さんは、タバコを吹かしつつ、優しい顔で穏やかに、今までの自分の人生の事、そして仕事に対する考え、さらにワシの将来へのアドバイスなどをしてくれた。実は作家になりたいのだと、ワシが書きかけの小説を見せると、食事をしながら、それを読んでくれた。やっと、まともな大人の人に会った気がした。

さて、前回登場した、入社当日ワシに早く次の仕事を見つけろと言ったKさんは、ある日を境に、会社に来なくなってしまった。実は前々から退職の意思を会社に伝えていたのだが、会社がなかなか退職届を受理してくれないという。本来ならば、キレイに退職しようと思ってたらしいのだが、それだといつまで経っても退職できない。法律では、退職は2週間前に通達すれば良いことになっている。その通り、退職届を出してから2週間後、Kさんは会社に来なくなった。Kさんはしっかり退職の意思を伝えたので、それを強行したのである。

Kさんの自宅に電話すると、奥様が出られて、 後ろで賑やかな子供の声が聞こえた。幸福そうな、普通の家庭の様子が伺えた。「薄々、みな、雰囲気を察していたのか、さほど騒いでませんから安心してください」。ワシがそう伝えるとKさんは笑っていた。次の就職先も決まっているらしい。それがワシがKさんと話した最後である。

ブラック企業であるからして、離職率は異常に高く、Kさんが辞めた後も、次々に新人が入ってくる。みな希望をもって入社してくるのだろうに、現実を知るとがっかりするだろうなと、哀れに思えてきた。ワシが入社して間もなく、ひとりの男性が入社してきた。40代の働き盛りで、仮に佐藤さんとする。佐藤さんも、ワシ同様に、入社初日に職場の異様な雰囲気を察したようだった。帰りに、ワシにそっと、電話番号を教えてくれないかという。その夜、さっそく佐藤さんから電話があった。「せんち君、あの会社はどういう会社なの?」。ワシは正直に答えた。Kさんから言われたこと、鈴木さんへの嫌がらせのこと、そしてワシも既に転職活動をしていること。「佐藤さんも、早めに決断した方がよいと思います。とはいっても、佐藤さんは妻子ある身ですので、一か月分でも給料出るまでは我慢したほうが良いと思います」

ところが、佐藤さんの行動は早かった。なんと次の日から出社しなくなったのである。給料なんかいらないから、さっさと辞めたいということだろう。佐藤さんは、わずか1日で退職してしまった。ワシは仕方なく一か月だけ我慢したが、本来ならば、将来の事が考えられない職場は一刻も早く退職した方がよい。何も自分のためにならない。得るものもない。未来が語れなければ、その場にいる意味がない。その人と一緒にいる意味がない。

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3 thoughts on “自己愛性人格障害(128) ブラック企業 その2

  1. とーます より:

    いつも楽しく?拝見させていただいています。
    最後の言葉
    未来が語れなければ、
    その場にいる意味がない。その人と一緒にいる意味がない。
    今のわたしの状況にハマりすぎていて、ズシーンときました。
    つい先ほど、なんでわたしはここに居るのかな・居なくてはいけないのかな・・・とぼんやり考えていました。
    ほんとにここでの未来が見えないんです。
    自己愛の被害に遭われている方々のブログなどを拝見せていると、うちはまだ軽い方なのかなと思っています。
    離婚を考えていた時は気持ちがMAXだったので、
    絶対離れてみせると思っていたのですが、今となっては離婚のわかりやすい決定打(暴力・浮気・借金など)がないのが、離婚を踏み切れない理由にもなっているかもしれません。

  2. せんち より:

    *** とーますさん
    離婚に理由が必要でしょうか。
    愛情がなくなった、老後一緒に暮らすことが想像できない、
    それで充分ではないでしょうか。
    暴力、浮気、借金などは、
    それを補完する程度の意味でしかないように思えます。
    愛情があれば、仮に借金があっても一緒に返済するんじゃないかしらん。

  3. MYU より:

    自己愛と一緒にいて幸せと思うなら他人からなんと言われようと一緒にいる。
    一生共にして無駄だと思うなら離れる。
    離れられない自己愛がいて つらくて仕方がないのなら
    変わらない自己愛相手に自分の目線を変えるしかありません。
    自己愛にしつこく好きだと言ったら責任もてないといって自己愛が逃げました。
    自己愛は変わりません。
    言い訳も謝罪も反省ではなく 悪者にならないための手段として言葉を使っているだけです。
    自己愛と関わるのなら 関わらざるを得ないのなら
    彼らの虚言も暴言も次はどんな言葉を吐くのか楽しみにできるくらいこちらの軸をしっかり持つことです。
    悩んでいるまに月日は過ぎ 蝕まれていきます。
    自己愛を受け入れる器がもてるのか 無理なのか・・
    ご自身の人生です。
    後悔のないように生きるのが一番だと思います。
    この瞬間も。
    かわらない自己愛に悩むのはもったいないです。
    関わるのなら 治してやる!覚悟で。

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